豊田のまちから……365日 絵本 それからいろいろ・・・



   
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プロフィール

森乃あさ 

Author:森乃あさ 
児童文学を書くことが好きな、人に言わせると、
まめなB型。そして山ガール。



好きな本

きりがないので、代表して
◎穴 HOLES 
 ルイス・サッカー

好きな作家

きりがないので、代表して
◎倉本 聰さん(脚本家)

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ひみつ

   
本

「ひみつ」    福田 隆浩   講談社

 山あいの町からN市にある大きな小学校へ
転校してきた明里。11歳、小学5年生。
 夏休みに母親と学校へ転入手続きに来た時、
図書室である少女と出会う。明里が転校してくると、
その少女は、事故による意識不明で入院していた。

 おかしい。絶対におかしい。
少女の事故現場で明里が感じた違和感。
明里は、真実を暴こうとするも、隠し通そうとする
クラスメイトからいじめにあう。
 前の学校で友人をいじめに加担したことを
今でも後悔している明里。いじめた友人にすべてを
打ち明けることで、勇気をもち、自分を信じて立ち向かう。

~感想~

明里の行動が、無鉄砲にも思え、どうなっていくのか
ドキドキハラハラした。
いじめを暴こうとする明里をいじめるクラスメイト。
担任もわかってくれない。
不信感が募る。
けれど、ラストは、おとなの力が働き、いじめが解決する。
光がある、救われる結末だった。
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熱風

   
本

「熱風」   福田 隆浩    講談社
 第48回講談社児童文学新人賞佳作入選

聾学校に通う孝司は、心のやり場のなく、
テニスに打ち込んでいた。
ダブルスを組む相手は、テニスサークルに入ってきた
同じ中2の中山という脱毛症の少年だった。
中山もまた、心のやり場をなくして、勝つことだけに
こだわっていた。
言葉も通じ合わない二人、反発しながらもテニスを通して
友情を育んでいく。

~感想~

 聴覚障害の孝司の口に出せない怒り、イライラ、諦めなどを
切実に描いている。テニスの試合の最中も、補聴器に汗が
はいりこみ、使えなくなってしまう。音がなくなっていく中で
戦わなければならない不安と焦り。

病気で髪の毛が抜けてしまった中山は、普段はキャップを深めに
かぶっている。普通学校に通うものの、友人がいないという。
両親は離婚し、母子家庭。

それぞれの心の悩み、やり場のない感情をテニスにぶつけて
いる。重い問題に胸をしめつけられる思いがするが、
テニスの場面が多く、どこまでもボールに食いついていく
少年たちの汗と根性に熱くなる。

考えさせられる一冊。

 
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下町不思議町物語

   
本

下町不思議町物語  香月 日輪 作 藤丘ようこ 絵
                         岩崎書店

~あらすじ ネタバレご注意~

6年生の直之は、今日も耕太と大げんか。
耕太は、直之がチビで生意気でよそモンだから
と、気にくわない。
体の大きな耕太にいじめられても、いっこうにめげない
強さを、他のクラスメイトは、感心していた。

両親が離婚した直之は学校から帰ると、父方の
実家ではなく、下町にある師匠の家へ行き、
宿題をする。
夕ご飯をごちそうになったりもする。
師匠の家は、驚くことばかり、でも師匠の作って
くれる料理は、とても美味し、居心地がいい。

優しいがいつも仕事で帰りが遅い父親、
いつもむっつりして、直之に厳しい祖母、
お金持ちで、豪華な夕食もそんな祖母とでは、
ちっとも美味しくなかった。

数学は得意だが、国語は苦手な直之に
師匠の友人の古本屋のおっちゃんが、
本をくれた。その本は、指先で文字をなぞると、
頭の中に文字と音で入ってくるという。
こんなん読まれへんと言っていた直之は、
辞書を駆使して文字を追っているうちに、
ある日、音が感じられた。
すると、だんだん国語の授業もついていけるように
なり、テストで70点をとった。

カンニングしたんだろうと、いわれたうえに、
テストの答案用紙を破られ、直之は、耕太を
つきとばし、大騒ぎになる。

ほら見たことかと、祖母は嘆き、息子である直之の
父親に、頭も体も遅れている、言葉も行動も
乱暴で、施設に入れた方がいいという。
あの子は病気なんだからと。

その話を聞いた直之は家を飛び出した。
父親と祖母が向かったのは、直之が
いつもお世話になっていた師匠のところ。
家でも学校でもあせるけど、師匠の家では、
ゆっくりできると直之はいっていた。

ところが、下町の師匠の住む家は、ふつうに
行くことができない。
そこは、不思議な町。

父の祈りが勝り、たどり着いたものの、そこに
直之はいなかった。
直之は母のもとへ向かっていたのだった。
住所もなにもわからず、大阪のミナミというだけで
向かったものの、会えるはずもなかった。
持っていたお金を取られそうになった直之を
助けたのは、師匠がよこしたタクシーの運転手。
いつも師匠の家からの帰り、送ってくれる師匠の
知り合いのこれまた不思議なタクシーの運転手。

となりのトトロのネコバスのようにおかあさんのいる
ところへ届けてくれたものの、直之はいっそう
さびしくなるばかりだった。

師匠の家で直之の父親と祖母は、直之の
帰りを待っていた。
そこは、駅前の喧騒から想像もできないほど
静かで、なぜかやすらぐような気配に満ちていた。
直之がここにいると、時間がゆっくり過ぎると
いうのが、二人にもよくわかった。

祖母は女に騙され、気の弱く、不甲斐ないと思っていた
我が息子が、直之を心配する姿を見て、そうでも
ないことに気づいた。

直之は不思議なタクシーに乗って帰ってきた。
泣き疲れてぐっすり眠っている直之を
師匠が抱きあげ、祖母へ預けた。
祖母の心に母性本能がめざめ、直之を
愛しいと思う。

耕太との問題も片付き、母親の現実を知った、
直之は少しおとなになった。


~感想~

面白かった。テンポがいいし、タイトル通りの不思議町が
子どもも大人も心の落ち着くいい場所だった。
不思議なことをうけとめる直之が子どもらしくていい。
幽霊がでたり、悪霊を追い払うシーンがあり、
どういう展開になるかと思ったら、心温まるところに落ち着いた。

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うたうとは小さないのちひろいあげ

   
ほん

「うたうとはちいさないのちひろいあげ」  村上しいこ  講談社

第53回野間児童文芸賞受賞作

~あらすじ ネタバレご注意~

高校一年の桃子は、うた部に入部する。
部員は部長の3年生大野いと。桃子を
むりやり勧誘した2年生の清ら。
唯一の男子 水泳部にも入っている2年生の業平だ。

うた部では短歌を詠む。
短歌には
・題詠・・・題を設定して短歌を詠む。
 〈うまさを競い合う意味もあり、普段自分から進んで
取り上げない世界を詠むことで、自分の意識を
広げるといういい面がある。〉
・自由詠・・・心の内面を重視して、自然と湧き起こる
思いに重点を置いて詠む。

高校3年間、友達を作らないと決めて、
友達づくりのきっかけになる朝の挨拶すら
交わさない桃子だったが、うた部の先輩たちは
楽しい人ばかりでだんだんとけこんでいく。

桃子は、学校帰りに立ち寄るところがあった。
登校拒否をしている綾美の家だ。
綾美が学校へ行かない理由は、桃子にも
責任があると思っていた。

クラスの後ろの席の彩は、綾美を心配し、
手紙を渡してほしいという。
「引きこもりって、自分の存在を守るための
行為だと思うの。……綾美さんに合わせちゃ駄目よ。
もちろん優しさは必要だけど、感情の渦に
巻き込まれちゃ駄目」
彩にも友達のことで悔やむ思い出があったのだ。

綾美を負担に感じながらも、ほっておけない桃子。
ピク短(ピクニックに行き、そこで短歌を詠む)へ
誘ったら、うた部へも誘ってみたらと、清らさんに
言われ、声をかけてみるも、断られる。

綾美はどうしようもない心の内をブログに
ぶちまけていた。
家に寄ってくれる桃子には感謝しているが、
自分を傷つけた一人として、当然のことのように
思ってもいた。綾美はうた部に入って楽しそうに
している桃子が羨ましい。自分は殻の中から
出ることができないから。

そんな二人をうた部のメンバーが優しく見守る。
綾美が学校へ来るようになったのは、
うた部へ行くためだった。もともと国語が得意
な綾美は頭角をあらわしていく。

短歌甲子園への切符を手に入れる、
県大会予選が始まった。
一回戦、題詠 いと先輩
     自由詠 桃子、綾美
     連歌   清らさん、業平先輩

見事に勝利し、二回戦。
     題詠 いと先輩
     自由詠 清らさん、業平先輩
     連歌  桃子、綾美

「うたうとは 小さないのち ひろいあげ」
桃子が詠んだ上の句に対して、
綾美は・・・・・・
そのとき、
「あの子、引きこもってたんじゃないの?」
と、静まりかえった教室に小さな声が響いた。

綾美は下の句を詠むことができず、
負けてしまった。

その日の夕方、大会の打ち上げと、
いと部長を送る会が始まっても、
綾美は姿を現さない。

迎えに行けばよかったと悔やむ桃子の
携帯電話に綾美から発信があった。
みんなで綾美を迎えに行く。

綾美は、桃子の素敵な上の句に自分で納得のできる
下の句をつけたかった。と言う。
今まで生きてきた中で、一番幸せだった思い出の
場所で、下の句を詠んだ。

「うたうとは 小さないのちひろいあげ
       宇宙へ返すぬくもりをそえ」

 ~感想~

・引きこもりと、短歌。引きこもりの少女を短歌を詠むうた部の
メンバーが救った。誰しも居心地のいい場所が必要だと思った。
・短歌甲子園のところは、もっと描写が
あってもいいと思った。
・「あ、でもほんと。みんな、なんて優しいんだろ。
自分が持っている一番やわらかで心地よいクッションを
、いと先輩の心にあてがおうとしている」
いい表現だなと思った。
・「人間なんて、自分だけでなんとかできる器用な
生きものじゃないから。人間に必要なのは、出会いと
別れが、ちゃんと共存している場所なんだ。
そこでいろいろな喜怒哀楽と関わっていく。…
短歌とは、人の心を種として、万の言の葉とぞ
なれりける。・・・。しかし種だけじゃだめだ。
種が空気や水、土や養分や日の光と関わり合って、
初めて目が出て言の葉となる。また傷つくかも
しれないが、癒されることもある」
 ここも好きだなあ。




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フラダン

   
フラダン

「フラダン」        古内 一絵  小峰書店

2017年 読書感想文 高校生向け課題図書

~あらすじ ネタバレご注意~

震災から5年後の福島、
工業高校2年生の穣は、水泳部を辞めた。
そりの合わない奴ら・・・松下からの数々のいやがらせ、
部活での集団行動になると、顧問や先輩受けのいい
松下になびいていく奴らにうんざりしていたからだ。

暇をもてあましているところに、澤田詩織という見知らぬ
女子からフラ同好会に誘われる。
「すごくいい体しているよね」
 恥知らずなことを言うしつこい詩織から、
穣は逃げていた。
ところが、調子のいいシンガポールからきたずば抜けた
美貌の転校生、宙彦に乗せられ、詩織の思うまま、
穣はフラ同好会に入部することになった。

女の腰ふりダンスじゃないか?
しかもフラ同好会にいた男子ときたら、
一年のおっさんのような大河と
モヤシのような健一。
ところがそこに同じクラスのマヤがいた。
他に2年の安瀬基子。1年生の女子が4人。
穣と宙彦が加わり、フラ同好会は、男子4人、
女子7人となった。


宙彦の父親は、元々福島出身
、再生可能エネルギー専門の技術者。
風力発電の研究のために戻ってきたという。
健一の父親は、電力会社の社員。事故の前なら、
工業高校に通う誰もが憧れた大企業だ。
安瀬は仮設住宅に住んでいた。
それぞれが心の傷をうけていた。
被害は少なかった穣にしても、絶対に大丈夫と
信じ込まされていたことが全部ウソだった。
閉そく感で腐りそうになる穣の世界は狭くて小さくなった。

目に見えないけれど確実に体に悪くて、
けれどそれが今後どういう形で現れるかはだれにもわからない。
海を見るとき、津波と切りはなすことができなくなっている
自分たちを、どこか遠くで感じていた。
震災を経てから、自分たちは家族や出身地について、
明け透けに語ることを控えるようになった。
震災の直後は、学校で突然泣き出す生徒も多く、
誰もがそっとしておいてくれた。

心の傷は、受けた被害の大きさや家庭環境によって異なるが、
みんながひきずっていた。

フラダンスの歴史を知り、DVDで習うも結構難しい。
「ステップも大事だけど、一番大事なのは笑顔よ」
詩織はいう。

老人施設への慰問がフラ男子のデビューとなった。
失敗したが、皆さんに喜んでもらえた。
その時の記事がきっかけになり、スポンサーがつき、
衣装も本格的になった。
フラガールズ甲子園にも出場できる。
詩織は力が入った。

仮設訪問先では、テレビレポーターからインタビュー
受け、意気揚々の詩織。
ところが、そこで彼らは、テントで焼きそばを作っている
電力会社の社員に対して言いたい放題本音を
ぶちまける仮設住宅に住む老人と
何度も頭を下げている社員の姿を見る。
その社員は健一のおとうさんだった。
老人はテレビクルーたちを見据えた。
「フラダンスなんかが、なんになる! 
それを見て喜んでいる我々を映し、
もう大丈夫だと安心したいのはお前たちのほうだろう。
被災した人の感動話ばかり見て、
これで全部終わったと思いたいのは
未災地の人間だけだ。ダンスなんかで、
ここにいる人たちの気持ちは変わらない。
そんなことで、この災害が済まされてたまるか!」

フラ愛好会のメンバーたちはカラフルな衣装に
包まれていたが、暗い表情で、一目見ようと集会所に
集まっていた大勢の人たちも拍子抜けした様子だった。

夏休みに入り、仮設訪問を紹介したニュースを見て、
新メンバーが5人入ってきた。
全員1年生の女子で、ダンスの経験者ばかりだった。

フラガールズ甲子園が近づいてくる。
詩織が部活に来なくなった。

詩織の心が壊れてしまったのは、
家庭環境のせいだった。

フラガールズ甲子園の日、詩織はいない。
穣には作戦があった。
唯我独尊で、上から目線で、高飛車で、空気なんて
全然読もうとしない。
でも、誰かをおとしめたり、罵ったり、
自分の優位を保つために誰かを傷つけたりはしない。
ヘロヘロに傷つき、あきれるほど弱虫で、あきれるほど優しい。
詩織はそんなやつだ。

おれたちはもっと話すべきだった。
辛い気持ちも悲しい気持ちも変わってしまった
町のことも、どうにもできない自分自身のいらだちも・・・。
妙に気を遣って、口をつぐんでいたのは、気遣いじゃなくて、
怠慢だ。
フラガール甲子園の舞台に立ち、パートナーをあえてたてなかった
穣は、詩織がこの会場にいるに違いないと思った。
でてこい!
穣は詩織を待った。
メンバーがみんな詩織を待った。

詩織は私服のまま舞台のそでから出てきた。
当然のように入賞はできなかった。けれど、彼らは
自分たちが大会に出場した意味はそこそこあったと思っていた。
そして舞台から降りた後。控室に向かう途中で、健一の父親と
あの時の仮設住宅の老人がいた。仮設住宅の小さな庭で
作った花を、花束にして。
変わってしまったものも、戻れないものも多いけれど、
それでもやっぱり、ここが自分たちの生きている現実なのだ。


~感想~
・社会情勢、心の傷を解消できないでいる人たちの心の内を
この小説の中に詰め込んである。
・思春期であり、震災を受けたこの土地で生きる高校生の
それぞれのキャラクターを上手く活かし、描いている作品
だと思った。
・震災から10年たった時、また書いてほしい。
・考えさせられる事柄を明るく描いているところがいい。
・ラストで、仮設住宅に住む老人が電力会社に勤める健一
のおとうさんと一緒に花束をもってくるところは、ちょっと不自然。
唐突に思えた。
老人の心の動きは、想像できるが、小説の中に書いていない。
高校生なら書いていないことでも想像できるから、
ここはかえって書かない方がいいのだろうか。
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