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プロフィール

森乃あさ 

Author:森乃あさ 
児童文学を書くことが好きな、人に言わせると、
まめなB型。そして山ガール。
最近、ハーフマラソンはじめました。

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珈琲屋の人々

本

「珈琲屋の人々」
       池永 陽   双葉社

珈琲屋に集まる人々を主人公にした短編連作集。

目次

初恋
シャツのぬくもり
心を忘れた少女
すきま風
九年目のけじめ
手切金
再恋

~感想~ネタバレご注意

冒頭の「初恋」に、最終話の
「再恋」が呼応する。
シリーズの1作目だが、この構成は三冊とも同様。

初めにシリーズ3から読み、2、と続き、今回
シリーズ1を読んだ。
主人公 行介が父親の珈琲屋を継いでいる。
アルコールランプの炎を見ているシーンから始まる。

行介が人を殺したシーンが登場。
(シリーズ3、2を先に読んでいるので、こういう場面なのか
思った)
行介と冬子のゆるがない愛情、島木の女癖の
悪いところなど、このシリーズで納得する。

このシリーズで一番印象的だったのは、
「すきま風」
寝たきりの介護をしている60代後半の誠実な男が
恋に落ちる。家の中は糞尿のにおいが漂っている。
その匂いのは、自分が世話を怠っていることにもなる。

週に2度のやすらぎ。
友人たちとのカラオケだった。その中に恋した50代前半の
女性がいた。
片思いだと思っていた女が実は自分に好意をもっていた。
その女性にのめり込んでいくほど、寝たきりの
妻が邪魔になる。目を開くこともあまりない。
いつまでこの状態が続くのか。
いっそ……。

ラストが強烈だった。

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12歳に乾杯!

本

「12歳に乾杯!」
    吉田道子・作   佐竹美保・絵
    国土社

~あらすじ~ネタバレご注意

小6の朝子の父は、染色。母はカウンセラー。
それぞれ夢がある。
食べていけないじゃないと喧嘩の日々。
三人家族の家の中は暗い。

同じクラスの雄介の両親は離婚していて、
母と妹と三人暮らし。でも明るい。

夢を追うことを選んだ両親は別れることになり、
とりあえず、3年間、朝子は父の実家で暮らす。
小学校卒業の日、雄介、島くん、容子たちとは
別々の中学へ行くことになる。

~感想~

病気で2年遅れている島くんの夢は木の実の美術館を
作ること。
葉や木の実、自然描写がいい。

松ぼっくりが一個のっかっている牛乳瓶。
それは湿度計。
晴れた日は、松ぼっくりのうろこが一枚一枚広がり、
しっかり乾いているから落ちない。
甘の日の松ぼっくりは、湿気を含んでうろこを閉じ、
瓶の底に落ちる。

教室の後ろにそんな牛乳瓶をおいている男子って
すてき。
鳥の名、木の実の名、沢山知っている男子、いいなと思う。

両親の離婚に悩む気持ちが切実に描かれている。
朝子の揺れる心を支えたのは、雄介たち。
どうしようもないことで悩み、今がある。
雄介の母も、島くんだってきっと。
悩み、考え、聞いてくれる人がいて、話してくれる人がいて、
なんとかやっていける。
つまづいていないで。まわりに目を向けて。
若木のような12歳のまぶしさを感じた。

ヤマトシジミの食卓

本

「ヤマトシジミの食卓」
           吉田道子     大野八生  画
           くもん出版
2010年『ヤマトシジミの食卓』で第51回日本児童文学者協会賞受賞。

~あらすじ~ネタバレご注意

もうすぐ夏休みというある日、
小3のかんこは、空き地のひらたい大きな石に
すわっていた老人と出会った。
にいちゃんは犬を拾ってきて「マフィア」と名付け、
かんこにはさわらせてくれない。
夏休みになると、かんこにとってただひとりの友だちの
ともちゃんが引っ越す。
かん子にとって、おもしろくないことが続くときだった。

そのおじいさんは「マフィア」に似ていた。
おじいさんは風助さんと言った。
風助さんは左足をくじいていた。
かんこはにいちゃんがマフィアを拾ってきたように、
おじいさんを家に連れて帰った。

突然、見知らぬおじいさんが家にいて、驚く家族。

にいちゃんは死んだおじいちゃんだと思っていたし、
おとうさんは、死んだおじいちゃんのつもりで、
おかあさんも、マフィアもいっしょに暮しはじめた。
なにも聞かずに。

足がよくなると、風助さんは家からいなくなった。
あるときは、かんこに出会った空き地の石の上にいた。
かんこは、ともちゃんが引っ越してしまうさびしさを
話すと、風助さんは「またあえるさ」といい、
「あしたは、いつだって、かんこの味方だ」と
不思議な呪文をつぶやいた。
どこからか元気の出る呪文だった。
そして、風助さんはかんこが生まれる前の
この空き地の近くに小さな川が流れていて、
カワウソがいたことなど話してくれた。
すっかり変わってしまった自然。
「かわらないものは、ここの、この石」
それはヤマトシジミの食卓だと言った。
石のそばにはカタバミがあり、ヤマトシジミという
蝶がカタバミ目当てにやってくる。
だから、この石は、ヤマトシジミの食卓。

風助さんがまたいなくなり、一週間がたった。
空き地に行くと、ヤマトシジミの食卓に
かおと言う同じ年の少女がすわっていた。
よくわからないことをいう不思議な少女だったが、
なぜか気が合い、かんこは友だちになった。

夏休みも終わり、秋も終わり、風助さんは花火を
沢山持って戻ってきた。ヤマトシジミの食卓で
おにいちゃんや友だちのかおと四人で花火をした。

風助さんはときどきなくなり、しばらくすると帰ってくる。
おとうさんに言われたように、いなくなるときは、
短い書きおきをしていくようになった。
戻ってくると、かおも一緒にヤマトシジミの食卓で
いろんな話をしてくれる。
風助さんがきて、一年近くたち、かんこも四年生になった。

5月の連休の頃、風助さんは出かけたまま、戻ってこない。
夏休みになり、かおと一緒に捜すことにした。
この空き地の近くの家を回る。
すると、風助と言う人は知らないが、あの空き地に住んでいた
八木千吾なら知っていると言う人がいた。
その人と風助さんは似ているようだった。

風助さんがいなくなり、四年生の三月、
風助さんが死んだと言う便りがきた。
手紙を出した人は、亀井さんと言う法律上の
手続きをする人だった。
風助さんは、やはり八木千吾さんだった。

風助さんの正体を知ることになる。
風助さんは、かんこに拾われてうれしかったと、
あの石の上での思い出、足をくじいて出会えた
ことを幸運だったと綴ってあった。

ヤマトシジミの食卓とあの空き地は、
風助さんからかんこへ送られた。

そこでかおと、グレープフルーツ、レモンなど
をかじる。
かんきつ類を植えて、蝶をいっぱい集める。
カタバミの葉にはきっとタマゴがぎっしりだろう。
それが全部ヤマトシジミになる。
二人は春のにおいをたっぷり吸いこみながら、
力が体の底からわいてくるのを感じた。

あしたは、かんこの味方だ!


~感想~

なにが起こるか分からない。
おにいさんが犬を拾ったように
風助さんを拾って家に連れてきたかんこ。

家族のいない、さびしい人生の末に
風助さんの前に現れた少女。

父への後悔に胸を痛めるおとうさんの
前に現れた風助さん。

生きている限り、なにが起こるかわからない
のかもしれない。

人間関係がいい方に向いている。
だからここちいい話になっていると思った。

見知らぬおじいさんを家に住まわせるところは
あり得ないと思いながらも、
この本は字が大きく、123ページほど。

少女とおじいさんのつながり、おじいさんが話す昔の話、
自然描写と、おとなも楽しめるけど、子どもたちが
読むといい。

なみきビブリオバトル・ストーリー

本

「なみきビブリオバトル・ストーリー」
              本と4人の深呼吸

赤羽じゅんこ 松本聰美 おおぎやなぎちか 森川成美=作
黒須高嶺=絵

「ビブリオ」とは「本の……」という意味で
「バトル」は「戦い」
「ビブリオバトル」=「本の戦い」ではなく、
本を紹介し、どの本が一番読みたいかを決める。

初めて知ったが、小学生~大人の間で行われているらしい。

公式ルール
1 発表参加者が読んで面白いと思った本を
持って集まる。
2 順番に一人5分間で本を紹介する。
3 それぞれの発表後に参加者全員で、その発表に
関するディスカッションを2から3分行う。
4 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」
を基準とした投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めたものを
『チャンプ本』とする。
                 ビブリオバトル普及委員会


この作品は、4人の作家さんが4人の登場人物の
話を書いている。
まったく違和感ない。
面白い企画だと思った。

それぞれビブリオバトルに参加するようになったきっかけ、
どの本を選ぶか、発表のどきどきなど、
どの作品も小学生の登場人物の気持ちを
リアルに描いていて、ノンフィクションかと思うくらい。

発表後、仲良くなるなど、「ビブリオバトル」の目的を
明確にしてあり、誰の本が「チャンプ本」に選ばれるのか?
楽しみだった。

この本の参加者は小学生だが、
豊田市中央図書館では10代限定で
行われるし、名古屋の鶴舞図書館では、一般向けに
行われる。

珈琲屋の人々

本

「珈琲屋の人々」  ちっぽけな恋
          池永 陽  双葉文庫

「珈琲屋の人々」の続編。

珈琲屋にやってくる人を主人公にした連作短編集。


目次

特等席
左手の夢
大人の言い分
ちっぽけな恋
崩れた豆腐
はみだし純情
指定席

 ~感想~ネタバレご注意

短編のストーリーのラストがどれもいい。
ぐっとくるものもあれば、予想外の驚くような終わり方も。


特に好きなのは「左手の夢」。

行介と同じ時期に刑務所にお世話になっていた
50代の男が主人公。
茂造は行介の珈琲屋へ現れる。
貧相な顔と体つきの茂造は刑務所内でよくいじめにあった。
柔道で鍛えあげた筋肉質の行介がかばってやっていた。

いじめの理由は「俺の自慢は、黄金の左手……」と貧相な
茂造が大口をたたくからだ。
元々は時計職人だった茂造は、玄関ドアや金庫のカギを
あけるのはお手のもので、窃盗でなんども捕まっていた。

そんな茂造を奥さんの君代はいつも待ってくれていた。
でも今度は君代にも考えがあった。出所したら必ず行介の
所へ行くに違いない、行介に頼んで、ひと芝居打ったのだ。
寄せ木で作られた箱根細工の箱に守り袋を入れて。

「お父ちゃんがこの箱に仕事を受けるかどうか賭けたように,
私もこの箱に賭けたんだ。もしお父ちゃんがこの指輪を
覚えてないようだったら、もう別れようって。一人で生きていこう
って」

茂造はまたも窃盗の仕事を受けようとしていた。寄せ木の
箱が開いたら。
けれど器用な茂造がどうやっても開けることが
できなかった。
君代は開けて欲しかった。開けて中身を見て欲しかった。
見かねた君代がヒントを出した。簡単に箱は開いた。
行介の箱だから、中身は見るわけにいかない。

行介の珈琲屋に窃盗の仕事を頼んだ二人組、
君代、茂造、そして行介。
行介が二人組を追い払い、君代がひと芝居を
打ち明ける。
守り袋の中、そこに入っていたのは、結婚指輪。

「黄金の左手は返上して、今日からはプラチナの左手。
奥さんのために、一生懸命働いてやってください」
と、行介は言う。

このラストの3行。

 いつもとはどこか違っているような気がした。
皺の寄った顔に目をこらした、唇だ。君代の唇には
薄く紅が引かれていた、こんな君代を見るのは何年ぶりの
ことなのか。
 途方もなく美しい赤だった。


副題に「ちっぽけな恋」とあるように恋バナが集結している。
50代ばかりじゃない、中学生の恋もある。
そこに行介がかかわっていく。

この文庫本の解説(吉田伸子 書評家)にこうある。

 誰のせいでも、何かのせいでもないのに、時として悪い巡り
合わせに入りこんでしまい、そこから抜け出すことが出来ずにいる。
本書に出てくる人々は、そんな人たちでもある。みんな不器用で、
みんな必死だ。必死だから誤ちを犯しそうになる。
自棄になってしまいそうになる。道を踏み外しそうになる。
だから彼らは行介の店にやって来る。
ぐらぐらする心を抱えながらも、彼らは何とか踏みとどまりたい
のだ。行介の側にではなく、こちら側に。



今作も前作同様、冒頭の「特等席」に、最終話の
「指定席」が呼応する。
そして、「珈琲屋」に来る客たちのドラマが縦糸で、行介と
冬子のドラマが横糸。(解説より)
その構成がとてもよく、だからか、この本の世界にすーっと入っていける。
珈琲屋を舞台にした本は多いと思うが、筆頭にあげたいし、
池永 陽さんの他の本も読んでみたい。

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