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森乃あさ 

Author:森乃あさ 
児童文学を書くことが好きな、人に言わせると、
まめなB型。そして山ガール。
最近、ハーフマラソンはじめました。

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フラダン

フラダン

「フラダン」        古内 一絵  小峰書店

2017年 読書感想文 高校生向け課題図書

~あらすじ ネタバレご注意~

震災から5年後の福島、
工業高校2年生の穣は、水泳部を辞めた。
そりの合わない奴ら・・・松下からの数々のいやがらせ、
部活での集団行動になると、顧問や先輩受けのいい
松下になびいていく奴らにうんざりしていたからだ。

暇をもてあましているところに、澤田詩織という見知らぬ
女子からフラ同好会に誘われる。
「すごくいい体しているよね」
 恥知らずなことを言うしつこい詩織から、
穣は逃げていた。
ところが、調子のいいシンガポールからきたずば抜けた
美貌の転校生、宙彦に乗せられ、詩織の思うまま、
穣はフラ同好会に入部することになった。

女の腰ふりダンスじゃないか?
しかもフラ同好会にいた男子ときたら、
一年のおっさんのような大河と
モヤシのような健一。
ところがそこに同じクラスのマヤがいた。
他に2年の安瀬基子。1年生の女子が4人。
穣と宙彦が加わり、フラ同好会は、男子4人、
女子7人となった。


宙彦の父親は、元々福島出身
、再生可能エネルギー専門の技術者。
風力発電の研究のために戻ってきたという。
健一の父親は、電力会社の社員。事故の前なら、
工業高校に通う誰もが憧れた大企業だ。
安瀬は仮設住宅に住んでいた。
それぞれが心の傷をうけていた。
被害は少なかった穣にしても、絶対に大丈夫と
信じ込まされていたことが全部ウソだった。
閉そく感で腐りそうになる穣の世界は狭くて小さくなった。

目に見えないけれど確実に体に悪くて、
けれどそれが今後どういう形で現れるかはだれにもわからない。
海を見るとき、津波と切りはなすことができなくなっている
自分たちを、どこか遠くで感じていた。
震災を経てから、自分たちは家族や出身地について、
明け透けに語ることを控えるようになった。
震災の直後は、学校で突然泣き出す生徒も多く、
誰もがそっとしておいてくれた。

心の傷は、受けた被害の大きさや家庭環境によって異なるが、
みんながひきずっていた。

フラダンスの歴史を知り、DVDで習うも結構難しい。
「ステップも大事だけど、一番大事なのは笑顔よ」
詩織はいう。

老人施設への慰問がフラ男子のデビューとなった。
失敗したが、皆さんに喜んでもらえた。
その時の記事がきっかけになり、スポンサーがつき、
衣装も本格的になった。
フラガールズ甲子園にも出場できる。
詩織は力が入った。

仮設訪問先では、テレビレポーターからインタビュー
受け、意気揚々の詩織。
ところが、そこで彼らは、テントで焼きそばを作っている
電力会社の社員に対して言いたい放題本音を
ぶちまける仮設住宅に住む老人と
何度も頭を下げている社員の姿を見る。
その社員は健一のおとうさんだった。
老人はテレビクルーたちを見据えた。
「フラダンスなんかが、なんになる! 
それを見て喜んでいる我々を映し、
もう大丈夫だと安心したいのはお前たちのほうだろう。
被災した人の感動話ばかり見て、
これで全部終わったと思いたいのは
未災地の人間だけだ。ダンスなんかで、
ここにいる人たちの気持ちは変わらない。
そんなことで、この災害が済まされてたまるか!」

フラ愛好会のメンバーたちはカラフルな衣装に
包まれていたが、暗い表情で、一目見ようと集会所に
集まっていた大勢の人たちも拍子抜けした様子だった。

夏休みに入り、仮設訪問を紹介したニュースを見て、
新メンバーが5人入ってきた。
全員1年生の女子で、ダンスの経験者ばかりだった。

フラガールズ甲子園が近づいてくる。
詩織が部活に来なくなった。

詩織の心が壊れてしまったのは、
家庭環境のせいだった。

フラガールズ甲子園の日、詩織はいない。
穣には作戦があった。
唯我独尊で、上から目線で、高飛車で、空気なんて
全然読もうとしない。
でも、誰かをおとしめたり、罵ったり、
自分の優位を保つために誰かを傷つけたりはしない。
ヘロヘロに傷つき、あきれるほど弱虫で、あきれるほど優しい。
詩織はそんなやつだ。

おれたちはもっと話すべきだった。
辛い気持ちも悲しい気持ちも変わってしまった
町のことも、どうにもできない自分自身のいらだちも・・・。
妙に気を遣って、口をつぐんでいたのは、気遣いじゃなくて、
怠慢だ。
フラガール甲子園の舞台に立ち、パートナーをあえてたてなかった
穣は、詩織がこの会場にいるに違いないと思った。
でてこい!
穣は詩織を待った。
メンバーがみんな詩織を待った。

詩織は私服のまま舞台のそでから出てきた。
当然のように入賞はできなかった。けれど、彼らは
自分たちが大会に出場した意味はそこそこあったと思っていた。
そして舞台から降りた後。控室に向かう途中で、健一の父親と
あの時の仮設住宅の老人がいた。仮設住宅の小さな庭で
作った花を、花束にして。
変わってしまったものも、戻れないものも多いけれど、
それでもやっぱり、ここが自分たちの生きている現実なのだ。


~感想~
・社会情勢、心の傷を解消できないでいる人たちの心の内を
この小説の中に詰め込んである。
・思春期であり、震災を受けたこの土地で生きる高校生の
それぞれのキャラクターを上手く活かし、描いている作品
だと思った。
・震災から10年たった時、また書いてほしい。
・考えさせられる事柄を明るく描いているところがいい。
・ラストで、仮設住宅に住む老人が電力会社に勤める健一
のおとうさんと一緒に花束をもってくるところは、ちょっと不自然。
唐突に思えた。
老人の心の動きは、想像できるが、小説の中に書いていない。
高校生なら書いていないことでも想像できるから、
ここはかえって書かない方がいいのだろうか。

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